[有限会社カバヤ及び株式会社リバイバルドラッグ 代表取締役] 蒲谷亘氏(写真左)
[株式会社リバイバルドラッグ 取締役] 増田信也氏(写真右)


調剤薬局の主力事業は当然調剤である。しかし、薬局は今大きな転換を迫られている。厚労省が「患者のための薬局ビジョン」を発表し、「在宅医療への対応」や「対人業務の強化」などの薬局に方向転換を迫りつつあるからだ。

そのため、薬局の経営陣が新たな方向性の確立に頭を悩ませている。ただし、糸口がないわけではない。例えば、糸口として地域特性があげられる。お年寄りが多い地域、住宅街が多い地域、駅前や商店街の地域など、薬局の立地は様々である。地域特性に応じて在宅医療に関わりやすいところ、かかりつけ薬局がやりやすいところなどに大まかに分かれることもあり、薬局周辺の地域特性を考慮することが新たな方向性発見の鉱脈となりうる可能性は十分にある。

もちろん、薬局は在宅医療やかかりつけ薬局を必ずしも行わなくてもよい。むしろ、異なる事業に取り組んでいる薬局も多く存在する。そこで今回は、在宅医療やかかりつけ薬局とは全く異なる事業を伸ばしてこられた薬局に注目したい。

今回取材をさせてもらったのは、有限会社カバヤと株式会社リバイバルドラッグである。有限会社カバヤは神奈川県川崎市を中心に8店舗を展開する薬局である。一方で、リバイバルドラッグは薬局でデッドストックとなった医薬品を通販で売買できるサービスを展開している。両社の代表取締役である蒲谷氏とリバイバルドラッグの取締役である増田氏にお話をうかがい、薬局が医薬品通販を行うようになった理由や成功要因などを取材してきた。


カバヤ薬局の子会社「リバイバルドラッグ」

—はじめに両社について簡単にご紹介いただけますか

(蒲谷氏)有限会社カバヤは、平成8年の開業以来、神奈川県川崎市を中心にカバヤ薬局8店舗を経営しております。大学病院やクリニックなど主要な処方元がどこであり、どのような処方箋を出されたとしても、患者様が処方薬を受け取れる薬局を目指してきました。

(増田氏)株式会社リバイバルドラッグ(以下、リバイバルドラッグ)は、薬局での不良在庫医薬品を有効活用することを目的に、平成15年に設立された不良在庫医薬品のネット通販(正確には医薬品卸)を仲介する子会社です。「リバイバルドラッグ」というサイトを立ち上げ、今では全国3000店舗以上の薬局を顧客とし、日々医薬品のネット売買を仲介しております。

—リバイバルドラッグを始めるきっかけは何だったのでしょうか

蒲谷氏)リバイバルドラッグを始めるきっかけとなったのは、会社設立以前に近隣や同級生の薬局間で「薬の交換会」を行っていたことです。薬局ではどうしても廃棄しはければならない医薬品が出る一方で、足りない医薬品は近所の薬局同士で融通しあう業界文化が存在します。処方元や地域特性に応じて、どのような薬が広範囲で必要なのか、逆に限られた範囲で必要なのかは薬局ごとに特徴があるので、「薬の交換会」の評判は良かったです。口伝えで評判が広がり、徐々に参加したいという薬局が増えてきた頃に真剣に事業化しようと思い立ちました。

—リバイバルドラッグに参加したい方はどのようなニーズがあるのでしょうか

(増田氏)設立当時から現在も変わらず、リバイバルドラッグに参加したいという方は、医薬品を廃棄するのではなく、ちゃんと有効活用してくれる人に渡したいという思いが強いと感じています。規模にもよりますが、1店舗で年間数万から数十万円もの医薬品が廃棄されていていますから。リバイバルドラッグへの参加有無に関わらず、薬局経営者や薬剤師の方であれば医薬品は無駄なく利用したい、してもらいたいと思っている方がほとんどだと思います。

—リバイバルドラッグにニーズはある、しかし前例がない状況で、どのようにルール作りをされたのでしょうか

(蒲谷氏)リバイバルドラッグを開始する上で重要だったのは、不良在庫医薬品の通販事業がどのように成立するのかという点です。日用雑貨などとは異なり、医薬品には移動に関する制限が設けられています。特に処方薬になるとその制限は厳しく、薬局間であっても移動に手続きが必要です。このため、監督官庁の担当者などと綿密に確認しながらルール策定をしていました。どのような許可や免許を得る必要があるのか、どの薬なら取り扱いできるのか、どのように販売・購入先の身元を確認するのかなど山積みの課題を一つ一つ解決していったことを思い出します。

(増田氏)ルール作りといえば、どのように医薬品のチェックを行うのかも重要な点です。よく知った薬局同士であれば信頼関係があり偽医薬品の売買が行われる心配もありません。しかし、実際には売買相手のことを知らない薬局同士が行う医薬品売買を私たちは仲介する立場にあるので、品質の確認は必要不可欠です。もし取り扱った医薬品で不祥事があると、事業の存続に大きな影響を及ぼすだけでなく、患者様に大きな迷惑をかけることになるので、医薬品一つひとつを丁寧に確認しています。

—リバイバルドラッグの設立から13年が経過しますが、事業の成長を振り返られていかがでしょうか

(蒲谷氏)リバイバルドラッグがここまで成長できたことは素直にうれしいことです。成長のきっかけは何かと聞かれれば、テレビやネットのメディアに取り上げられたことが大きかったと思います。メディアに取り上げられる以前は、すでに参加している薬局からの口コミを聞いて参加したいという薬局が多かったですので地道に一歩一歩事業が大きくなっていました。しかし、一旦メディアに取り上げられると、全国各地から問い合わせが来るようになり、対応に追われる日々でした。参加薬局数が増えるということはそれだけ取り扱う医薬品数が増えるということなので、品質確認や発送対応などの人員体制の見直しも行いました。

—リバイバルドラッグが今直面している問題は何かございますか

(増田氏)日本の医薬品が世界から注目されています。最近は特に中国で日本の医薬品の人気は高く、特定の医薬品にプレミア価値がついているそうです。なので、どのようなルートかはわかりませんが、日本の医薬品が中国に流されるケースがあるそうです。リバイバルドラッグにも医薬品を販売してほしいと中国関連だと思われる企業から問い合わせを受けています。リバイバルドラッグとして国内の免許を取得し身元を確認できる相手以外に医薬品を販売することは、すべて断っています。また、リバイバルドラッグがどのように悪用されるのかわからないので、販売・購入先の身元確認を慎重に行っています。時にはGoogle Mapを活用したり、所在地の監督官庁や公表しているデータなどで新規申し込みがあった薬局の情報を確認しています。

信頼関係は必要不可欠

—リバイバルドラッグに関するお話を伺いましたが、これから新たな事業を展開する際に注意すべき点があれば教えていただきたいです。

(蒲谷氏)薬局に関わる事業は処方元と薬局、患者と薬局、薬局と薬局などすべて信頼関係があるからこそ成り立つと思います。このような信頼関係を無視したり、信頼関係の構築をなおざりにしたりしてしまうと、いかに良い事業計画であっても成功にはつながらない可能性が高いと思います。早く新たな事業を確立させたい、拡大させたい気持ちもわかりますが、焦らず一歩一歩輪を広げていく事業計画を立てられるとよいのではないでしょうか。競合他社の台頭もありますが、我々の薬局及びリバイバルドラッグはこれからも信頼関係を大切にしながら精進していきたいと思います。

【代表取締役プロフィール】

蒲谷 亘(かばや わたる)

薬剤師。1989年に昭和大学薬学部薬学科を卒業。塩野義製薬株式会社に入社し、MR(医薬情報担当者)職に従事。退社後、1996年に神奈川県川崎市にカバヤ調剤薬局1号店(坂戸店)を開業。以来現在(2018年8月時点)までに8店舗を経営されている。また、薬のデットストックのネット販売を手がける「株式会社リバイバルドラッグ」を設立し、薬の再利用(リバイバル)しあうネットワークを構築。構築したネットワーク内の薬局経営者や薬剤師、有識者の方々から幅広い信頼を得ており、ご意見番としても活躍されている。


【取締役プロフィール】

増田 信也(ますだ しんや)

大学を卒業後、薬剤師の紹介・派遣会社に就職。その後、有限会社わかばクラブ(現 株式会社リバイバルドラッグ)に入社。リバイバルドラッグのサイト構築をはじめ、全国での営業活動と顧客訪問を担当。


【企業プロフィール1】

企業名 有限会社カバヤ
本社所在地 神奈川県川崎市高津区坂戸1-6-19
事務局所在地 神奈川県川崎市高津区溝口3-8-1
設立 平成10年4月
資本金 350万円
従業員数 50名
事業所
  • 神奈川県川崎市(7店舗)
  • 東京都江戸川区(1店舗)
会社URL https://www.kabaya-pharmacy.co.jp/index.html

【企業プロフィール2】

企業名 株式会社リバイバルドラッグ
医薬品卸問屋 リバイバルドラッグ
設立 平成15年5月29日
資本金 900万円
従業員数 14名
事業内容
  • 医薬品の販売
  • 医薬品の卸売
  • 医療コンサルタント他
登録許可
  • 医薬品卸売販売業(第3040015号)
  • 古物商(第452530005552号)
会社URL https://www.revivaldrug.co.jp/index.html