【有限会社完成堂藤井薬局 取締役 藤井大輔氏】
今回ご紹介する有限会社完成堂藤井薬局は、東京・四谷にある老舗の薬局である。
明治時代に創業した「寺尾完成堂薬局」を、現取締役・藤井大輔氏の祖父が継承し、
名を「完成堂藤井薬局」と改め、今なお「地域のおくすり屋さん」として活躍している。
創業当時より、時代の要請やニーズに合わせながら、柔軟に提供するサービスを変えてきた同局。1980年代には本格的に調剤業務を開始し、現在は、調剤業務を柱としながらOTC薬品、生活関連商品の販売を行なっている。
現在の時代及び行政からの要請としては、2018年度の報酬改定の内容から分かるように、新たな変革と柔軟な対応が薬局には求められている。
例えば、2018年度の報酬改定では「地域支援体制加算」「服薬薬剤調整支援料」の新設が示された。
一定以上の医薬品の備蓄、24時間調剤対応、在宅体制の構築、他医療機関との連携を促すことを目的とした「地域支援体制加算」。
保険薬剤師による減薬提案の促進を狙った「服薬薬剤調整支援料」。
いずれも、厚生労働者は薬局に対し、きめ細かい対応を求めていることが伺える
このように、薬局が国から評価される基準が変化していく中、地域に根付いた薬局には、
「変わるモノ」と「変わらないモノ」があると、藤井氏は語る。
地域の薬局における、“変化していく価値”、そして“不変の価値”について、藤井氏に話を聞いた。
お客様が求めているニーズに、素直に応える。
—最初に完成堂藤井薬局について教えてください。
完成堂藤井薬局は東京・四谷にある調剤とOTC薬品の販売を行なっている薬局です。
私の祖父が「完成堂藤井薬局」の前身となる「寺尾完成堂薬局」を昭和15年に継承し、
誕生しました。
完成堂藤井薬局は、開業当初より「笑顔と安心を届ける」を信念に、東京・四谷のかかりつけ薬局として、地域の皆様の健康をサポートする存在になることを理念に経営しています。
そして、私達が一番大切にしていることは「対面カウンセリング」です。「お客様が今求めていることは何なのか」を徹底的に聞き、それに見合うサービスを提供することに重きを置いて、日々の業務に取り組んでいます。
—ありがとうございます。「対面カウンセリング」を大切にされているのですね。今、厚生労働省が薬局に対して求めている役割は多岐に渡ると思います。そのような中で「対面カウンセリング」をお客様にじっくりと行いながらも、国から求められている薬局の役割を果たしていくために、何か意識していることがあれば教えてください。
意識していることは、「お客様のニーズに“素直”に応える」ということです。
今、厚生労働省から示されているように、薬局は様々な役割を果たしていかなければなりません。例えば、減薬の提案や地域の医療機関との連携、24時間の窓口対応などです。
確かにこれらは、高齢化していくこれからの社会を考えると大切なことですし、薬局としても真剣に向き合っていくべきことと思います。
しかし、これまでの現場の実感から言えば、私達のような地域に長年根付いている薬局に対してお客様が求めていることは、ひとえに「安心感」だと思っています。
これは、地域の薬局において「変わらない価値」だと考えています。
安心感とは「あそこの薬局にはどんな薬剤師さんがいて、どんな人柄で、どんな対応をしてくれているのか」ということがお客様の中に湧く実感のことです。
この安心感を感じてもらうためには、絶対的に「対面カウンセリング」は外せません。
仮に、国から求められている役割を全て果たそうとして行動した際、その対価として「対面カウンセリングの質やスピードに遅れが出る」ということがあったとしたら本末転倒だと思っています。
自分の薬局に来てくださるお客様は「店舗だけじゃなく、在宅での対応も絶対にして欲しい」というニーズが強いのか、それとも「今処方された薬についても、もっと詳しく相談したい」というニーズが強いのか。
このお客様が最も求めていることに“素直”に応える必要があると思っています。
ですから、私たちは「今お客様が求めていることを素直に提供すること」という軸で
業務の比重を判断しています。
今の私達の薬局に求められていることは「安心感」だと認識していますので、求めている全ての役割を満たしていくというよりも、一人ひとりのお客様に寄り添う時間を大切にしています。

お客様の安心感を得るために、顧客対応力の向上を目指す。
—なるほど。ありがとうございます。地域の薬局として変わらない価値である「お客様の安心感」を大切にしていることがよくわかりました。そのお客様からの「安心感」を得るために何か工夫していることがあれば教えてください。
できるだけ、社員やスタッフの方々に裁量権を渡すようにしています。
弊社の場合、実は長年勤めてくださっている方が多いのが特徴です。
よく薬局は離職率が高いと聞きますが、弊社の場合は少ないです。
「“お客様の安心感”を得るためにできることを考えよう」という価値観だけは共有しています。それ以外の細かいことについては、その価値観・軸を持って行えば、自ずとできることは決まると考えています。
もちろん緊急対応や判断に迷うことはありますので、スタッフ間のLINEに私も参加し、適宜指示や意見を伝えています。
このような意識のもと日々の業務を行うことで、お客様への対応力が上がり、地域薬局としての不変の価値を守り続けることができると思っています。

地域特性を踏まえた経営方針が大切
—地域の薬局として変わらない価値である「お客様の安心感」を大切にしていることがよくわかりました。今後、薬局に求められる役割は更にきめ細かくなっていくと思います。そのような状況に対して、どのように対応していくか、何かお考えのことがあれば教えてください。
やはり、地域特性に合わせる、ということが大切だと思います。
実は私達の薬局に訪れるお客様の中は「ジェネリック薬品」を望まれないお客様が比較的多いです。もちろんジェネリック薬品のご説明やご提案を行いますが、無理に押し付ける必要性もないと思っています。
国が薬局に求められることとして「ジェネリック薬品の推進」があると思いますが、これも地域によっては、かえってお客様の求められていないことだったりもします。
このように考えた時、求められている役割全てをそのまま実行するのではなく、地域のお客様が望んでいること、あるいはもっと幸せになれることは何かというフィルターを通した上で必要な役割を担っていけば良いと思っています。
【企業プロフィール】
企業名 | 有限会社完成堂藤井薬局 |
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設立 | 昭和15年4月 |
資本金 | 300万円 |
従業員数 | 5名 |
事業所 | 東京都新宿区四谷2-8 |
ホームページ | http://www.kanseidou.co.jp/ |