[株式会社マツオ十字堂薬局 代表] 松尾賢氏
行政は薬局に様々な役割を求めている。ご存知の通り、「在宅診療」や「かかりつけ薬局」、「地域医療への働きかけ」などがそれに当たるだろう。これらの役割をどのように果たしていくのかは個々の薬局経営者の判断に委ねられている。
薬局の役割について冷静に考えると、「地域の健康が維持・改善するような役割を果たす」ことが重要な役割だ。このように考えたとき、どのように地域に貢献できるのか、どのように地域の生活に薬局を組み込んでいくのか、薬局の果たすべき役割を考える糸口は様々あるはずだ。
もし地域医療の発展に寄与の方法がわからないときは、他の薬局がどのような方法で取り組んでいるのか調べてみるのも良い方法である。薬局としての強みや地域の特徴を活かした取り組みをしている薬局を見つけることができる。
今回は、カウンセリング・経過サポートなどの”対人”の領域を積極的に活用し、次世代を担う子どもの教育に力を入れている、マツオ十字堂薬局を取材させていただいた。かかりつけ薬局や在宅医療とは異なる切り口で新たな薬局像を作り上げている様子をお聞きすることができた。
—マツオ十字堂薬局について簡単にご紹介いただけますか
マツオ十字堂薬局は、東京渋谷区恵比寿で95年以上続く老舗の薬局です。私が4代目の経営者となるのですが、元々は薬剤師ではなくデザイナーとして活動していました。しかし、薬局を継ぐと決断してから、私の母が代々続く薬局での調剤業務を行う傍ら、イチから薬局の店舗経営を学んでいきました。そして現在は、調剤業務だけではなく、カウンセリングを主体とした「相談サービス」も行っています。カウンセリングの内容は、私自身の体験・経験・思いから「ダイエット」そして「妊活」に関するものが主なものになっています。
—異分野の経験がある松尾氏から見て薬局の変化をどのようにお考えですか

現在、薬局は行政から様々な変化への対応を求められていることを感じています。しかし、私自身が「薬局」畑出身ではないこともあると思いますが、その状況を非常に冷静に見ています。
そして、最も本質的に大切なことは、「薬局は、患者様の”悩み”を解決する商いだということを忘れないこと」だと感じており、その発想を元に様々な経営戦略・施策を展開しています。
—近年患者様の悩みとして増えてきたと感じることはありますか
現場に立っていて患者様の相談に乗っていて感じることは、「子宝・妊活」のカウンセリングの需要が近年高まっていることです。 私達の薬局にカウンセリングに来られる「妊活」にお悩みのお客様は、インターネットで玉石混交の情報に踊らされ、それがストレスとなってしまい、悩みが深くなってしまうケースがほとんどです。このようなご相談は、私達の店舗がある地域はもちろんのこと、インターネット経由でも多数寄せられます。
—インターネット経由でもカウンセリングを行っているのですね。
私達は店舗だけではく、インターネット通して全国各地で悩んでいらっしゃる患者様の相談に耳を傾けています。私達の店舗の周りであっても、そうでなかったとしても、私達の相談サービスを通じて、将来のそれぞれの地域を担う「子供」「親子」をサポートすることがこれからの地域医療や日本の社会への貢献につながると思っています。
薬だけでなく、カウンセリング・経過サポートなどの”対人”の領域で、薬局としての役割とサービス業としての役割を統合して価値を提供していく。こうした新しい取り組みが、新しい”薬局”の存在意義を見出していくと確信しています。
【企業プロフィール】
企業名 | マツオ十字堂薬局 |
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設立 | 昭和23年4月 |
従業員数 | 6名 |
事業所 | 東京都渋谷区東3-17-11 |
会社URL | http://jujidou.net/ |