[株式会社アフェクティー 代表取締役] 佐藤秀哉 氏
今回ご紹介する株式会社アフェクティー代表取締役の佐藤氏は、大学卒業後保険薬局勤務一筋で約17年間務めたのち自身で開局。
決して若いころからいずれは開局したいと思い描いていたわけではないとのこと。いくつかの会社で勤務するうちに「理想の薬局を自分での手で作りたい」という想いに至ったと語ってくれた。
佐藤氏の開局に至るまでの経緯について紹介するが、おそらく保険薬局企業に勤める多くの薬剤師が共感する話かもしれない。なぜなら佐藤氏が特別なサクセスストーリーを歩んできたわけではなく、サラリーマンか独立か、葛藤しながら自分の薬局を立ち上げた経緯は、きっと薬剤師の誰もが一度は味わう話ではないだろうか。
さまざまな会社を経験して感じたモヤモヤ、開局への道のり
—はじめに佐藤さんのご略歴を教えてください。
私は、大学を卒業後、千葉県内で店舗展開している薬局に3年間勤めました。中小規模の会社でした。その後、大手チェーン薬局で10年働きました。この10年間では、薬局の管理者、エリアマネジャー、本社購買部など様々な立場・部署を経験しました。このころに、「このまま大手企業での勤務を続けるべきか、それとも違う道を選ぶべきか」と悩み始めました。
—では、その大手チェーン薬局を退職されて独立開業されたわけですか?
いえ、違います。自分で薬局をやろうと思い立ったこととプライベートの事情も重なり大手を退職しましたが、すぐに開局できたわけではありません。退職後は、知り合いからの誘いで、また別の中規模チェーン薬局で勤務したり、分業案件や売却物件を探す時間を確保するために、自宅近くの薬局でパート勤務したり、試行錯誤が続きました。結局独立したのは大手を辞めてから4年経ってからのことでした。
—なるほど。独立しようと思ってもすぐにできるものではないですよね。ところで、どうして独立開業しようと思われたのですか?
ゴタゴタとモヤモヤです(笑)。大手勤務時代、上司が立て続けに退職したり、責任範囲が見えなくなったり、別の部署への配置転換があったり。どこの会社にでもあるゴタゴタですね。それに、通勤距離が長かったことも理由かもしれません。千葉の山武市にマイホームを建てたことや身内の病気などプライベートの事情も重なって、通勤時間を短縮したいという気持ちも芽生えました。もちろん大手での経験が今につながっているのでこの時期を否定するものではありません。また、自分のキャリアデザインが描けなくなった時期でもありました。これがモヤモヤですね。薬局やドラッグストアに勤めている薬剤師なら、誰しもある年齢でキャリアに迷う時期を迎えると思います。それは薬剤師としての専門職能を高めていくことと会社の中でのキャリアアップ、すなわち出世とか昇給とか、そういうことを悩む時期って必ずあると思います。私にとってはそれが30代半ばでした。
—なるほど。卒後10年、ベテランと言われ始めるころがキャリアに迷う時期なのかもしれませんね。そして佐藤さんは独立開業の道を選ばれたわけですね。
はい、ゴタゴタとモヤモヤの時期に、知人の勧めでとあるセミナーに参加しました。それ以前にも薬局開局セミナーなどにも参加していましたが、そういったものとは全く違うものです。そこで、目の覚めるような衝撃があって、自分がこれから何をすべきか、何がしたいのかを自分自身で整理することができました。正直いうと最初はあまり気乗りしなかったんです。そういうセミナーってなんだか怪しいじゃないですか(笑)。でも行ってみて良かったと思います。今では私が知人にこのセミナーを紹介しているぐらいですから。
—大手を辞められてから、開局までの経緯をお聞かせください。
経営のスキルも必要でしたし、たまたま知人からの紹介で中小チェーン薬局の部長職のお誘いがあったので、マネジメントを勉強するためにも一旦その会社で研鑽に励みました。その後、自宅近くの薬局にパートで勤めながら、開局のための準備に取り掛かりました。いろいろな物件を紹介されましたが、なかなか納得できず、結構時間をかけて探しましたね。大手を辞めてから4年が経って、ようやく良い物件に巡り合い開局することができました。
—では改めて貴社のことを教えてください。
2011年12月に会社を興して、船橋駅前に1号店を構えました。私が38歳の時です。通勤時間が大幅に短縮されたかというとそうでもないのですが、これもご縁ですね。それから4年間で3店舗まで拡大できました。オリビエ薬局本町店、オリビエ薬局鎌ヶ谷店と新規出店しました。3店舗目の小串薬局はM&Aです。全店舗で薬剤師8名、事務8名ですから、それぞれが割と小さな店舗です。
—今後も事業拡大は考えていらっしゃるのですか?
そうですね、10店舗ぐらいまではイメージしています。あまり店舗数が多くなると自分ひとりで目が行き届かなくなりますし。とはいえ、「何年後までに何店舗」と目標を掲げているわけではありません。積極的に新規出店やM&Aを考えていきますが、あくまで自然の流れに逆らわずに理想の薬局を作っていきたいと思っています。
—貴社の経営課題を教えてください。
やはり人材育成です。私よりも年上のベテラン薬剤師がいたり、中途採用で入ってきた方もいたり、まだまだ薬局運営のベクトルや価値観が揃っているとは言い難いです。その課題に対しては、社長からのトップダウンではなく、社員とコミュニケーションを取って修正していくようにしています。特に各店舗の管理薬剤師さんとのコミュニケーションには気を配っています。一方で、経営者である私が直接管理薬剤師に指導するのがいいか、またはマネジャーを新たに置いて経営者と現場とのつなぎを担ってもらうのがいいか、そんな悩みもありますね。
—佐藤さんの今後の目標を教えてください。
58,000薬局のすべてが生き残れるわけではないと国が言っている時代です。ある地区の薬剤師会に加入する薬局の3分の1は後継者不足だなんていう話も聞いたことがあります。この先、薬局が自然淘汰されるような厳しい時代に突入すると思います。これから出てくる新卒薬剤師や若手の行き場がなくなってしまうのではないかと危惧しています。そのせいなのか最近、若い薬剤師の元気がないようにも感じます。もっとガツガツやってほしい。自分たちの考え方ややり方次第で生き残っていけると私は信じているし、それを自ら実践して、若い人たちにその背中を見せたいと思っています。まだこの年齢ですが今まで育ててもらったこの業界に恩返しをしたいという考えもあります。それが今の私の目標だと思っています。
※本記事の取材日は、2017年10月1日時点のものとなります。
佐藤 秀哉(さとう ひでや)
1973年福島県生まれ。東邦大学薬学部卒業後、保険薬局一筋17年。理想とする薬局を自分の手で作りたいと、38歳で創業。社会の要請に応えられる愚直な薬局を目指し日々奮闘中。
【企業プロフィール】
企業名 | 株式会社アフェクティー |
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設立 |
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資本金 | 1000万円 |
売上高 | 2億8千万(2017年時点) |
従業員数 | 16名 |
事業所 | 千葉県 |