漢方薬 は効き目が現れるまで時間がかかる。このように漢方薬を決めつけてしまっている方も中にはいらっしゃるのではないでしょうか。たしかにこのような考え方は漢方薬の一側面ではありますが、見落としてしまっている部分もあります。それは、漢方薬にもすぐに効果が現れる即効性があるという側面です。ここでは、漢方薬の歴史に基づいて簡単に漢方薬の即効性について説明していきます。

漢方薬の発祥の地は中国

漢方薬の発祥の地は中国であることはみなさんご存知でしょう。中国では伝統医学として中医学が発展し、それとともに漢方薬も発展してきました。漢方薬にはすでに何千年という歴史があり、その中で漢方に関わる書物が多く編纂されてきました。

漢方薬の原典『傷寒論』

漢方薬に関する様々な書物の中でも、漢方薬の原典とも言われている書物が『傷寒論』です。この書物は、後漢末期から三国時代にかけて張仲景(ちょうちゅうけい)という中医学の医師が編纂しています。

書物が編纂されるまでに中医学の中で効果があると考えられてきた漢方が風邪や胃腸の症状などの日常的な症状からチフスやコレラなどの伝染・感染症に対してレシピ形式で解説されています

時代背景から即効性の漢方は不可欠

この書物の中にはチフスやコレラなど(諸説あり)が取り上げられていることから、薬に対して求められるのは即効性です。急性の胃腸炎による嘔吐や下痢が治らなければ、当時では死に直結してしまうからです。

なので、『傷寒論』の中では、風邪や下痢などに対して、どのような漢方を服用すると効果があるのか、などが患者の経過とともに解説されている箇所もあります。

継続的に服用することも勧めている

もちろん漢方を長く飲み続けて効果のあることについても記述があります。例えば、あるレシピの漢方を〇〇日間服用すると、どのような効果が期待できるなどです。

身近な漢方も実は即効性がある

このように漢方の歴史を紐解くと、古代から漢方には即効性の側面も効果として期待されていたことがわかります。日本には5~6世紀ごろに大陸から漢方が伝わり、使われ始めたとされています。

我々の身の回りにも漢方がたくさんあり、「葛根湯」や「麻黄湯」といった漢方薬を知っている方もいるはずです。中には、風邪の症状の際に欠かさず服用している方もいるかもしれません。

「葛根湯」や「麻黄湯」は市販薬としても販売されており、発汗作用を促すことで風邪を早く治す効果があるとされています。つまり、即効性があるということになります。もし「漢方薬は継続的に服用して慢性疾患を治す薬」などと思っていた方は漢方に関する認識が大きく変化したのではないでしょうか?

漢方は慢性疾患、西洋薬は急性疾患という考え方

確かに今の日本では、急性の患者さんに漢方薬が処方されることはほとんどありません。急性期の病気の場合には西洋薬を服用することが一般的です。このように漢方は慢性疾患、西洋薬は急性疾患と割り切ってしまうのは悪いことではないでしょう。(日本の医療機関や薬局ではそのような割り切りがなされていることが多いと感じることがあります。)

ただし、この記事を読んでいただいたみなさんには、急性の疾患(風邪や下痢、嘔吐、疲労など)にも漢方の効果的である可能性もあると覚えておいていただきたいです。そうすることで、いざとなったときの対処として選択肢が増えるからです。