[株式会社エルマノ 代表取締役]  野間智彦 氏


今回ご紹介する株式会社エルマノ代表取締役の野間智彦氏の目標は、地域での在宅医療一番薬局。

2014年から創業家の2代目社長として奮闘。在宅医療と介護事業に力を入れ、医療機関からの処方せん応需だけに頼らない薬局経営を目指していると力強く語る野間氏。歯に衣を着せぬ物言いから直球勝負の経営者であると想像できる。自社の成長戦略を悩みながらも、明確な目標をもって実直に取り組む姿勢と具体的な活動は、読者に多くの示唆を与えるのではないだろうか。


在宅と介護。先駆的にやってきたが、これからはもっと力を入れていきたい。

—はじめに野間さんのご略歴を教えてください。

日本大学を卒業後、医療機器メーカーの販社で営業を6年間やっていましたが、今から10年ぐらい前に会社を継ぐために退職しました。営業の仕事も面白かったのですが、人の上に立てる機会はそうはないという先輩の後押しもあって、この会社に来ました。社長になったのは2014年からですが、当時は常務として薬局全般の運営管理に携わっていました。
私は薬剤師ではないので、現場からの信頼を得るために店舗に足を運び従業員とのコミュニケーションを取るよう心がけていました。現場のニーズにすぐに応え、行動で示すことで信頼してもらえるようになったのではないかと思います。

—経営者としてスタートはスムーズにいきましたか?

この会社に入ってすぐに「まずい!」と思いました (笑)。長く会社経営を続けていけば、どの会社にも大なり小なり問題はあるわけで、正直に言ってうちにもいろいろと問題はありました。ですが、私の役目は従業員とその家族の生活を守ることですから、その使命感から立て直さなければと思いましたね。
いろいろと改革に着手しましたが、まだまだ発展途上です。今年から管理職も増やし、社内の基盤固めをさらに強化しています。店舗管理、在宅業務、薬剤師採用・教育など特定の分野に特化して業務推進をさせるなど、経営環境の変化に対応できる強い組織を作っていこうと考えています。

—今の経営ビジョンについてお聞かせ下さい。

株式会社エルマノ

まずはこの1~2年で店舗を可能な限り増やしたいと考えています。昨今M&Aが促進されていますが、今が最後のチャンスだと見ています。その後は、店舗拡大路線から地域に根差した多角化経営に切り替えるつもりです。特に介護ですね。当社は鎌倉や藤沢エリアに強いので、このエリアで介護事業を強化していきます。
外来での処方せん調剤に始まり、年月を経てその患者さんに介護が必要になれば、当社で訪看や介護施設を持ち、看取りまで面倒を見るというのが理想形です。

私はこの保険調剤のビジネスモデルがあまり好きではありません。語弊があるかもしれませんが、この業界って処方元である医療機関の下請けのように思われている節があって、それを払しょくしたい。「おたくの薬局と付き合っていてよかった」と医療機関に評価されるような立場になりたい。医療機関から独立した状態で自分たちだけでもちゃんとビジネスが成り立つという形にしたいと思っています。

—すでに在宅医療には取り組まれているのですか?

訪看さんやケアマネさんへの営業をかけて、医療機関を頼らずに在宅の件数を伸ばす努力をしてきました。現在、居宅で300人、個人宅で140人の実績があります。ここまでくると逆に医療機関側から在宅を受けてくれないかとオファーされます。
実は、介護保険が始まる前から先代の社長が在宅医療には取り組んでいましたが、そこまでの件数はありませんでした。今から約4年前に全社員を集めて、在宅医療に注力していくんだということを私がトップダウンで指示しました。ただ、実際には「やろう!」という従業員もいればそうではない従業員もいました。その後、個人面談もして、やりたいという従業員だけを集めてプロジェクトチームを作りました。ほかにも医療事務のスタッフを営業担当に変えたりもしました。今は「すばるカフェ」という地域のケアマネさん向け勉強会を開催することでネットワークを作り、在宅医療の依頼や相談がくるような環境を整えています。

—「すばるカフェ」というのは?

ケアマネさんは医療職と接する機会が十分ではないようなので、医療情報や薬物療法に関する情報提供というコンセプトで毎月開催しています。当社の社員と外部講師が2ヶ月に1回ずつ交代で登壇します。外部講師には、病院の退院支援の担当者だったり、クリニックの看護師だったり、医師だったりします。

—改めて貴社の特徴について教えてください。

やはり在宅医療に注力していることですね。すばるカフェもそうですが、鎌倉地域の医療・介護職を対象とした「緩和ケア勉強会」もやっています。地域全体の底上げに一役買えないか、本当の意味での地域貢献とは何なのかということを常に考えてきました。これらを数年前から取り組んできたことで、地域との関係性を構築し、医療機関や介護事業所からの信頼も得ていることが当社の強みです。

—今後の課題やこれから取り組もうとしていることはありますか?

株式会社エルマノ

訪問看護事業を近い将来にやりたいと思っています。ですが、我々の考えに共感し、賛同し、共に働いてくれる人材がまだ見つかっていません。看護師ならだれでもいいというわけではないので、薬剤師もそうですが、人材確保が重要な課題です。

そして、夢ですが将来海外進出もしたいと考えています。海外での介護事業ですね。現地でスタッフを育成して、場合によっては日本でも働いてもらう。そんな人材交流もできたらいいなと思っています。

【代表取締役プロフィール】

野間 智彦(のま・ともひこ)

日本大学卒業後、医療機器の販社で6年間営業職を経験。その後、株式会社エルマノに転職。2014年7月から創業家として2代目社長に就任。

【企業プロフィール】

企業名 株式会社エルマノ
設立 1992年7月
資本金 2,000万円
売上高 14億7千万
従業員数 約70名
事業所 神奈川県横浜市
会社URL http://hermano.co.jp/