医師は効果のある薬を患者に使ってもらいたいと思っています。しかし、必ずしも医師が希望する薬を患者に使ってもらえるわけではありません。その一つの原因が、医療品の価格です。医薬品の中には、何百万円もする非常に高額なものもあり、薬の使用を躊躇してしまいます。では、なぜそのような高額な医薬品が存在するのでしょうか。
医薬品の価値と価格の関係
医薬品の価値の一つとして、その医薬品の医療市場における希少性が考えられます。医薬品の希少性が高いと、特定の症状に対する有効薬として数種類の医薬品しかありません。医師や患者にとって薬の選択肢が少なく、金額がいくらであろうとその医薬品を使わざるを得ない状況も考えられます。一方で、希少性が低いと、有効薬として多数の医薬品が存在する状況です。医師や患者にとって薬の選択肢が多いので、金額などを比較して医薬品を使うことができます。
当然、希少性が高い医薬品の価格が高い傾向にあります。しかし、徐々に似た有効薬が登場することで、医薬品の希少性が低くなり、価格はだんだんと低下していきます。
このように医薬品の価格はその価値と関係しています。しかし、“誰が”医薬品の価値を判断して価格を決めているのでしょうか。
薬価とは
患者が保険診療で薬に対して支払う基準価格として、全国一律に「薬価」が存在します。厚生労働省が薬価を定める医薬品を判断して、その医薬品の薬価を決定します。決定した薬価の基準は価格表に収載されます。現在では、約15,000医薬品が薬価基準の価格表に収載されています。診療報酬にもとづく保険医療機関では、医師が原則薬価基準から医薬品を選択して患者に処方しています。効果があると言われている新薬でも薬価基準になければ、原則使用することができません。
薬価基準表への新規掲載の判断は、新薬については年4回程度、ジェネリック医薬品については年2回の頻度で実施されています。また、すでに薬価基準表に掲載されている医薬品の薬価の改定は、毎年実施されています。時には、価格基準表への掲載の必要性も判断され、薬価基準表から削除されることもあります。
薬局では薬価だけを支払うのではない
薬価が全国一律で定まっているということは、どの病院や薬局で医薬品を受け取っても支払い金額は同じになると思うでしょう。しかし、そういうわけではありません。薬価とは、あくまでも保険診療で薬の価格を算定するための基準にすぎません。その病院や薬局で受けたサービスや技術料なども含まれた金額を支払うことになります。