薬局や薬剤師が地域貢献する取り組みの一環として「かかりつけ薬剤師」制度が平成28年4月から始まった。現在(2017年9月)、かかりつけ薬剤師制度が2年目を迎え、その数を徐々に拡大している。厚生労働省や薬局などの広報により住民にも認識が広まりつつあるであろう。では、どうしてかかりつけ薬剤師が今求められているのだろうか。
かかりつけ薬剤師の存在意義とは
かかりつけ薬剤師とは、指定してもらった利用者を担当にもち、お薬のサポートをする薬剤師のこと。従来の薬剤師よりも利用者との距離が近いのが特徴である。
体調への気遣い
かかりつけ薬剤師と利用者の関係は “お薬のパートナーシップ”で結ばれている。なので、利用者が薬局へ来た場合、顔色や声色などの体調の変化に気をくばることができる。必要に応じて、医療機関への診察を促したりすることもある。
残薬の管理
かかりつけ薬剤師は利用者のこれまでの薬歴を把握している。薬歴を確認しながら、飲み切らなかった薬の確認などを適宜行っている。家庭に余っている薬が多くある場合、かかりつけ薬剤師が服用の指導を行っている。
対応が柔軟
かかりつけ薬剤師は利用者の症状や体質などをよく把握している。そのため、薬の服用などの相談などには柔軟に対応して解決方法を提案することができる。また、祝休日や夜間など薬局がしまっている場合でも、電話などで対応することも可能だ。
このようにかかりつけ薬剤師は利用者の薬への不安などを解消して適切な服用を促すことで、利用者の健康をサポートしている。
薬剤費の削減にもつながる
かかりつけ薬剤師の存在は利用者の健康サポートにつながるだけでなく、薬剤費を削減することにもつながる。薬剤師が適切な服用指導や残薬管理を行うことで、余分な薬を処方しなくなると考えられる。その結果、薬剤費の削減につながると期待されている。
かかりつけ薬剤師制度が2年目を迎え、1年目の効果を検証する企業があった。日本調剤が行った自社のかかりつけ薬剤師の活動調査によると、かかりつけ薬剤師による利用者のサポートにより薬剤費が9ヶ月で約8440万円削減できたことがわかった。
薬剤費を削減し社会保障費の負担を減らしたい国としては目論見通りの結果である。しかし、かかりつけ薬剤師制度はまだ1年目を終えたばかり。かかりつけ薬剤師の負担増など、議論して解決すべき問題がある。ただ単にかかりつけ薬剤師の数を増やすのではなく、薬剤師・利用者・国にとってWin-Winであるような制度になっていくと良いのではないだろうか。