日本医薬品卸売業連合会・経営管理委員会は平成29年8月9日に、平成28年度医薬品卸売業の経営状況を速報として発表した。この速報は、2017年4月に卸連合会所属企業に卸経営のアンケート調査を実施し、直近の決算状況をまとめた概要であった。回答状況としては所属企業の76.39%にあたる55社から回答が得られていた。

前年比マイナスの売上高

速報によると、売上高は-3.51%の減少となり、前年度の+8.26%から大幅な減少となった。最近では、平成27年にも売上高が前年比マイナスとなっている。この際は消費税が5%から8%に引き上げられた直後の年度であったことが大きく影響していた。しかし、平成28年度の場合、前年度に増税は行われていない。では、何が原因であったのか。
その一因として考えられるのが、ジェネリック医薬品の使用割合が大きく伸びたことである。ジェネリック医薬品は先発薬よりも安価である。当然、卸額は安くなるので、使用割合が大きくなることは卸の売上高の減少に影響してくる。

コストカットで対処

売上高のマイナスに対して、医薬品卸は何かしらの対策を取らなければいけない。速報からは、人件費伸び率が-2.06%、従業員数の伸び率が-0.06%と減少していることが確認できた。経営の悪化をコストカットで対処しているということになる。医薬品卸としては厳しい選択を迫られる経営状況にあることが明らかになった。

今後も厳しい状況は続くのか

医薬品卸にとって懸念材料の1つに、新薬創出・適応外薬解消等促進加算制度がある。この制度の目的は、名前の通り、新薬開発を促進すること及び適用外薬問題を解消すること。この制度の対象となる医薬品は加算の対象品目リストに加えられる。医療業界としては、全医薬品に占める新薬創出加算品の金額割合は増えている傾向にある。医薬品卸にとって利益率の低下につながり経営状況が厳しくなる要因になっている。
また、このようなカテゴリーチェンジだけでなく、さらなるジェネリック医薬品の拡大も懸念されている。厚生労働省は社会保障費を削減するために、ジェネリック医薬品の使用割合をさらに拡大させようとしている。具体的には、平成30年度から平成32年度末の間に、ジェネリック医薬品の使用割合80%以上にしようとする政策目標を立てている。
医薬品卸は多くの懸念材料を抱えている。医薬品卸は制度の変化に柔軟に対応できるような経営体制への見直しを迫られていると言えるだろう。