保険薬局や薬剤師のあり方について様々な議論がなされている。その中で、2017年8月に内閣府政策統括官(経済財政分析担当)によってまとめられた資料に注目が集まっている。
院内・院外の調剤技術料の格差
議論を読んでいる資料は、「調剤・薬剤費の費用構造や動向等に関する分析-調剤技術料の形成過程と薬局機能-」である。医薬分業が進む我が国において、院内外での外来投薬に係る技術料の状況を分析し、調剤技術料や保険薬局、薬剤師のあり方を探ることを目的としている。
この資料の中で、技術料の現状として、「外来薬剤費 1,000 円当たりの技術料は、院外処方時には、院内処方時の 3.3 倍である」という分析結果が示されている。さらに、「こうした(院外処方時の)高い技術料に見合うサービスが(薬局薬剤師によって)患者に提供されているのか否か、技術料の水準の妥当性が説明されるべきである。」と指摘している。薬局薬剤師のあり方の現状に疑問を呈した形である。
技術料のみで比較していいのか
この指摘に対して、薬局薬剤師と病院薬剤師の業務を技術料という1つの判断軸だけで比較しても全く無意味であるという反論が出ている。確かに、薬剤師と一口に言っても、薬局薬剤師と病院薬剤師では重要視する業務が異なっている。それなのに、技術料だけを取り上げて、薬局薬剤師のあり方を指摘するのはやや早計かもしれない。
薬剤師の業務は様々
薬局薬剤師の業務は、次の3つが主なである。
- 調剤業務:処方箋をもとに薬を調剤する
- 服薬指導:患者に処方薬の服用方法などを指導する
- 薬歴管理:患者の服用履歴を管理する
一方で、病院薬剤師の業務は薬局薬剤師のような業務の他に、
- 病棟業務:病棟で患者の服用を確認し、適宜正しい服用を指導する
- 治験業務:新薬の開発に携わる
- 薬品管理業務:医薬品の使用状況や在庫状況を確認し、必要に応じて発注などを行う
- 製剤業務:患者の状況に合わせて薬を調剤する
このように薬局薬剤師と病院薬剤師ではかかわる業務が様々である。技術料が関わる調剤業務はそれぞれの業務の一部なので、技術料だけの比較は意味がないという反論には頷けるかもしれない。
患者へのサービスを充実させる方向へ
ただ単に技術料だけで薬局薬剤師と病院薬剤師を比べるのは問題があるかもしれない。しかし、これからますます薬剤師のサービス、特に対人サービスの向上が求められるのは確かである。かかりつけ薬剤師の拡充が進められているのがいい例である。今回の議論が薬剤師全体のサービス向上につながる方向へ進んでほしい。