最近、調剤薬局を取り囲む状況はますます厳しくなっている。その原因の1つは、これまで2年に1度であった薬価改定が2018年度から毎年行われるからである。薬価が引き下げられることで、多くの調剤薬局の経営は悪化する傾向にある。薬価改定のペースがより早まることで、調剤薬局の安定的な運営はさらに困難を極めていくことが予想される。そして、調剤薬局の業界再編は加速するであろう。
大手調剤薬局の一人勝ちではない
調剤薬局の業界再編が進むとはいえ、影響を受けるのは中小調剤薬局だけで、大手調剤薬局の一人勝ち状態だと思うかもしれない。しかし、現状では大手調剤薬局も業界再編の影響を受けている。大手調剤薬局も生存戦略に舵を取る必要性が出てきている。すでに、不採算店舗の相次ぐ閉店を行っている大手調剤薬局も存在するほとだ。
M&Aの手法でも戦略の変更を迫られている。これまでは大手調剤薬局のグループ傘下に中小調剤薬局を加え、グループ傘下の薬局数を拡大していくのが一般的であった。この場合、常に譲受するのは大手調剤薬局であり、譲渡するのは中小調剤薬局という図式であった。

譲渡薬局が譲受薬局に
現在の調剤薬局のM&Aの図式は、大手調剤薬局のグループ傘下に入った薬局、つまり譲渡薬局が今度は譲受薬局になるというものである。こうすることで、譲受薬局がその規模を拡大し、仕入れの一斉化などで利益を得やすくなるのである。一方で、新たにグループ傘下に入った薬局にとっては、豊富な資金力とブランド力が確保できるというメリットがある。

M&Aによる時間短縮が魅力
調剤薬局を新たに出店しようとすると、出店先の確保、薬剤師やスタッフの採用などを1からすべてを行う必要がある。そのため、膨大な時間や費用を投資することになる。一方で、M&Aの場合、すでに”できあがっている”薬局をまるまる確保できるの。M&Aの契約にこそ時間がかかるが、それでも新規出店よりも「効率的」である。
M&Aをしても薬局の環境はそのまま
M&Aをされた企業がどうなるのかと考えると、社員がすべて退職させられるというネガティブなイメージを抱くかもしれない。しかし、調剤薬局のM&Aの場合、多少の契約の変更はあるが、譲渡薬局の“できあがった”環境をそのまま引き継がれることがほとんどである。
譲渡薬局の経営者についても、顧問契約などで引き続き働くことが一般的である。譲受企業としても経験豊富な人材には残ってほしいので、慰留をお願いすることもあるそうだ。