[有限会社ヒルマ薬局 取締役] 比留間康二郎氏(写真右)


調剤薬局は日本の医療を支える重要な存在である。しかし、そんな調剤薬局は今変化を求められている。その理由の一つに、国の医療費負担が増加し、国の財政を圧迫しているからだ。厚労省や財務省は医療費を減らすために、薬局にも残薬問題の旗振り役など、様々な役割を求めている。

調剤薬局がこれまでの「処方箋を扱う店舗」から脱却し、「患者のための店舗」へ移行することは容易に行えることではありません。だからこそ今、薬局経営者は在宅医療やかかりつけ薬局など、どのように患者のためになる薬局を作り上げるのか、頭を悩ませています。

そんな中で、すでに新たな取り組みを始めている薬局もあります。今回は「みんなで選ぶ 薬局アワード(注)」を受賞された有限会社ヒルマ薬局の比留間康二郎氏を取材し、どのような取り組みをされているのか、お話をお聞きしてきた。


みんなで選ぶ 薬局アワードの最優秀賞を受賞

—ヒルマ薬局について簡単にご紹介してください

我々ヒルマ薬局は大正12年に池袋で創業し、調剤だけでなく健康食品の販売などにも力を入れてカウンセリングなどを通して患者様に安心と安全を届けています。現在では豊島区(池袋店)と板橋区(小豆沢店)にも店舗をもち、豊島区の本店を兄と母が、板橋区の店舗を私(弟)と祖母が経営しています。一族4代にわたり培ってきたヒルマ薬局の理念である「あなたの心のよりどころ」を大切に受け継ぎ、患者様に気軽に相談していただける存在であるよう日々努めています。

—みんなで選ぶ薬局アワードの最優秀賞を受賞されましたが、ヒルマ薬局のどのような取り組みが評価されたのでしょうか

みんなで選ぶ薬局アワードにおいて、ヒルマ薬局は「必要なのは薬じゃなくてあなたの夢」をテーマにプレゼンしました。このテーマにしたきっかけは、ヒルマ薬局に勤務している従業員からの一言で「夢」について考えさせられるようになったからです。それまで、薬局は薬を調剤するところで、「夢」がかかわる場所であるなんて考えたことがありませんでした。しかし、従業員に夢について聞くと、やりたいことや待遇など様々な夢が出てきて、びっくりさせられたのを覚えています。その時に、従業員の夢をかなえてあげたいと思うと同時に、薬局を利用してくださっている患者様にも夢を実現するお手伝いをしたいという思いがこみ上げてきました。それからいろいろと試行錯誤し、ドリームマップを一緒に作り、夢を語り合うという取り組みにたどり着きました。

—ドリームマップの作成とは具体的にどのようなものなのでしょうか

ヒルマ薬局で行っているドリームマップの作成とは、個々人の夢を文字や絵、図で表現する取り組みのことです。普段は心の中にしまっている夢を形にすることで、他人に共有することができたり、具体的な実現方法を相談しあったりすることができるので、非常に良い方法だと思っています。ドリームマップの作成会に参加していただいた方の夢を実際に叶えることにつながった例もあり、その方の笑顔を見られたときは言葉には表せない感動がありました。

見つめなおした地域医療への関わり方

—小豆沢店の周辺には他社の薬局が多いですが、いかがですか

ヒルマ薬局

小豆沢店の周りに他社の薬局ができたことはある意味で良いことだと思っています。もともと小豆沢店の周辺は我々を含めて2店舗しかなく、一日何百枚も来る処方箋を捌くのに精いっぱいな日々が続いていました。利用してくださる患者様と深い関係を築く余裕もなく、本当にこれでいいのかと思うときもありました。

周辺に他社の薬局ができたことで、自分の薬局の強みを考える時間が出来、調剤以外のことに目を向けられ、ドリームマップの作成など取り組みができるようになりました。また、小豆沢店が所属する志村地区の地域活動にも参加し、支え合い会議や社会福祉協議会に関わるようになりました。ヒルマ薬局も含めて地域住民が主体となり、地域の高齢者を支えるための動きが実現しつつあるので、うれしく思っています。

—今後の薬局経営で目標とすることがあれば教えてください

調剤薬局として患者様からたくさんの処方箋が持ち込まれることは信頼されている証として、もちろん嬉しいことです。しかし、日々の業務が処方箋を捌くだけになってしまってはいけないと思っています。患者様との深い関係を築いたり、時に長い時間かけて相談に乗ったりするなど、患者様に向き合うことを忘れてはいけません。なので、今後のヒルマ薬局では、「調剤薬局ではなく、いきつけのお店」になることを目標にしています。調剤だけでなくカウンセリングや地域医療などを積極的に行い、患者様や地域の方々が笑顔と夢で溢れるような店舗づくりをし薬局の枠を時には外したり大きくしていくように邁進していきます。

注:みんなで選ぶ 薬局アワード

一般社団法人薬局支援協会が2017年より開催している、薬局の取り組みを世の中に知ってもらうことを目的とした大会。1次選考と2次選考に分かれており、それぞれ書類審査とプレゼンテーション審査である。2次選考進出者のなかから投票で賞が決定する。ヒルマ薬局が第1回みんなで選ぶ薬局アワードの最優秀賞に輝いている。

【取締役プロフィール】

比留間 康二郎(ひるま こうじろう)

薬剤師。薬局を経営する一家に生まれる。1993年にヒルマ薬局を経営していた父が倒れたことで本格的に薬剤師を志し、東京薬科大学に進学。卒業後、日本大学板橋病院、国立成育医療研究センターでの勤務を経て、家業であるヒルマ薬局で働きはじめる。現在は小豆沢店の経営を担っている。また、現役最高齢の薬剤師として現在も小豆沢店に勤務される祖母を世界記録に認定してもらうことを計画している。

【企業プロフィール】

企業名 有限会社 ヒルマ薬局
本社所在地 東京都豊島区池袋本町1-46-5
設立 1926年
資本金 300万円
従業員数
  • 正社員8名
  • パート・アルバイト9名
  • (2017年4月 現在)
事業所
  • 池袋店
  • 小豆沢店
会社URL https://hiruma-azusawa.com/