2016年12月、当時の塩崎恭久厚生労働大臣が薬価改定に関する抜本的な方針転換を発表した。その内容を的に説明すると、これまで2年に1度実施してきた薬価改定を2018年移行は1年に1度実施するという内容です。業界関係者に大きな衝撃と反発を与えた発表であったが、その背景に何があったのでしょうか。
薬価改定の基本方針転換の背景
薬価改定の基本方針が大きく転換した背景として挙げられるのは、「国民医療費」の存在です。図1を見ると、国民医療費が年々増加傾向にあることがわかります。

国民医療費とは1年間に医療保険に使われた医療費の総額のことで、国がこの一部を社会保障費として負担しています。国民医療費が年々増加しているということは、その分だけ国の負担費は増加していることを意味します。ご存知の通り、日本は借金大国であり、できるだけ借金を減らす方向に舵を取るのは当然の流れと言えます。
その中で、薬価改定は国民医療費の中の「薬剤費」に関係しています。図2を見ると、薬剤費は近年増加傾向にあることがわかります。また、国民医療費に対する割合が近年ほぼ横ばいであることから、国民医療費の増加に対して薬剤費が同じ比率を保ちながら増加していることがわかります。

薬価改定は、薬の市場実勢価格を薬価に反映させるための改定です。そうすることで、薬剤費の増加を抑えることでき、国の負担費を抑えることができると期待されています。
改定の頻度を増やすことで国の負担費をさらに抑えることがつながると考えられています。毎年薬価改定に賛成する経済財政諮問会議の委員によると、薬価改定を毎年行うことで、国民医療費は約1900億円(うち国の負担費は約480億円)削減できると試算されています。
業界関係者が反発する背景
薬価改定により、ある薬の薬価が引き下げられると、その薬を扱う企業の収益は減少します。企業の収益性が減少するということは、それだけ企業が投資に慎重になることにつながります。
例えば、新薬の開発では、開発費用を市場に流通させ回収しなければいけません。開発費用が回収できなければ、企業としては新薬の開発はマイナスです。毎年の薬価改定により収益化が難しいとなると新薬の開発を賢明でないと判断する企業が出てきてもおかしくありません。しかし、新薬の開発のように投資が減少すると、他の企業との差別化がしにくく、結果として企業の競争力を低下させることになってしまいます。
このように毎年の薬価改定は企業の競争力や医薬品の提供などに重大な影響を及ぼすことが予想されているので、業界関係者及び団体では反対声明を出しています。